伝説の経験値を求めて 

生き方はシンプルに、人生はアバウトに

イニシエーションしてきたこと

なんて小説なんだ……

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本日もお読みいただきまして、誠にありがとうございます。ゲシバイヌと申します。

 

台風接近中の日本において、これほど読書の秋に衝撃を与える作品があっただろうか。

なんだか、小説とはすごい媒体なんだなぁ、と改めて感心してしまったので記事にさせていただきます。

 

写真の通り、乾くるみ先生2004年発表の有名な作品である「イニシエーション・ラブ」についてです。

 

ネタバレ含むつもりなので、未読の方はご容赦を。

 

さて、イニシエーション・ラブの作者である乾くるみ先生のデビュー作は、メフィスト賞作品の「Jの神話」です。

私はメフィスト賞が好きで、出身作家の作品は未読でも知ってはいるのですが、癖の強い作風が受賞傾向にあるこの賞は、私にとって小説のおもしろさを教えてくれた思い入れありの賞でもあります。

 

西尾維新先生大好きなんですが、彼もメフィスト賞出身。

 

とまあ、このイニシエーション・ラブは名前は前から知っていたし、一昨年に元AKB前田敦子さんと、松田翔太さんら出演によって映画化もされています。

 

内容は知らずとも、「へえ、映画化したんだ。確か、乾くるみ作品だったよな」みたいな感じで、私は映画館に足を運ぶこともなく、ぼんやり考えておりました。

 

で、今回何故、今になってイニシエーション・ラブを読んだかといいますと、職場での些細な会話から読むことになったんですよ。職場のバイトの子が、サラッと読めますし絶対に読み返さずにはいられない作品ですよ! って。

 

少し前に、我孫子武丸先生のあまりにも有名な作品「殺戮に至る病」を読破していたところだったんですね。大好きなKindleで読んでいました。←これは、どうでもいいかw

 

つまり、叙述トリックにハマっていたわけです。

小説を読み始めた頃からミステリは好きなのですが、本格推理とかバカミスとかいろいろありますよね。

 

その中でも、叙述トリックというのは小説媒体じゃないと、つまるところ文字媒体でないと成立しない技であります。

 

言葉で騙す。

 

殺人事件でありがちなトリックというのは様々あれど、こと叙述トリックというのはものすごく高度な手法だと思います。

 

たかだか、文字だけで文章だけで読み手を騙くらかすなんて……。

 

そしてイニシエーション・ラブは、この叙述トリックを使った作品で「最後のページの2行目は先に絶対読まないでください!」みたいな、キャッチコピーがあるんです。

 

未読の人からしたら、この一文ですでに種明かししているようなものなので、編集者ちょっと売り込みミスってるだろw と、思ったものですが、いやはや……

 

私も騙されましたw

 

うーん、初読でトリックを見破ることはできませんでした。

ただの切なくて甘酸っぱい恋愛小説だと最後まで信じ込んでしまった。

 

マユちゃんいい女の子です

 

イニシエーション・ラブにおいて、重要になってくるキャラクターは「成岡繭子」という歯科衛生士。まだ、二十歳。

本文の描写からすれば、うぶなショートカットの明るい、男なら誰でも惹かれそうな女性です。

 

私男だけど、いいなーマユちゃんとか思ってましたw

 

そして、鈴木という大学4年生の男が合コンでマユちゃんと出会い、甘酸っぱい青春を送っていくのですが……どこから騙されていたのか、最後のほうで覆ってくるんですよ。

 

物語は前半後半に分かれていて、語り手は同じですが(一人称小説なので、僕である鈴木が語り手)読み進めていくと、何やら違和感が出てくるんですよね。

 

私の場合は、後半に入ってまもなくあれ? 入れ替わってるな、とか思っていました。

何が入れ替わっているかというと、当然、語り手である鈴木なんですが、しかし、入れ替わっている? と、違和感を禁じ得ないだけの話で別におかしくもないよな? と、自分を納得させてしまったんです。

 

話の内容的に、リアルな性描写も絡み、大学4年生である鈴木は就職という岐路に立たされ、社会人であるマユは女性である問題に直面したりと、一部分一部分切り取ってみても、読ませてくれる。

 

でもそれら全てが、最後の2行目のためだったかと思うとなんだか切ない!

 

2人が出会うのは、鈴木が数あわせで呼ばれた合コンにて。

たぶん、マユみたいな女の子がいたら男は誰しも喜ぶだろうし、後にアプローチをかけられたのなら、食らいついてしまうでしょう。

 

そこを逆手に取ったような叙述トリックは、いあや、感動ですよある意味。

 

最後のページでは、いよいよ種明かしとなりますが、ああ、マユちゃん健気で可愛いなぁとか思っていた読者は、恐怖のどん底へ。

この恐怖は、男女ともに共有できそうな気がします。

 

恋愛って、ある種、美しいし醜いですわw

 

読後の読者の行動

 

私は二度読みたくなるのお触れ通り、サラッと読み返してはみましたが、まずネットのレビューサイトなどを徘徊して読破後の興奮を冷ましました。

 

正直、イニシエーション・ラブはマユの話なんでしょうね。

 

各考察サイトを閲覧させてもらい、自分なりにこの作品について考えてはみたのですが、答えは人それぞれなのでしょう。

 

ただ、よくできてますよホント。

ミステリって、広い意味でミステリなんだと思いましたね。

 

人を騙すのはよくないことですが、小説では大いに騙して欲しいところです。あのいい意味で裏切られたときの感覚は、日常生活において光明が差してくるほどの高揚感。

 

昂ぶってくる。

 

小説は読むのに時間がかかりますし、私の読書スピードの遅さも原因ではありますが、何冊も一気に読むことはできません。

 

しかしその分、漫画とは違ったカタルシスを得られるのは小説ならでは。

 

特に、このイニシエーション・ラブは恋愛小説としてもミステリ小説としても、表裏一体というか読者の脳内変換にもよりますが、十分すぎるほどに感動を与えてくれます。

 

これだけ有名な作品なので、賛否両論あれど、ストーリーから感じ取れる無二の反応は読者にとって大変いいものになるのではないでしょうか。

 

マユちゃん……他に方法はなかったのか。

鈴木……そこは男として違うだろ。

美弥子さん……ちょっと積極的すぎだろ。

天童……お前、誰だよw

合コンメンバー……序盤以降、話に絡んでこなさすぎw

 

なーんて感じで、登場人物に突っ込みをいれたりしながら再読するのもおつな素晴らしき小説でした。

乾くるみ先生の他作品もそのうち読んでみようかと思います。

 

ではでは、今日はこのへんでm(_ _)m